子供の成績を上げたい…学習の転移を利用すればいい
子供の成績を上げたいと思う親御さんは多いと思う。
前回の記事で書いた「得意教科を伸ばす」ということも、子供の成績を上げることになるが、学習の転移という方法もある。学習の転移を利用し、それまでとは違う分野で一流のプロになるという事例もある。
つい最近も、元プロ野球選手の長谷川滋利さんが、別の仕事を持ちながらも、48歳にしてゴルフの「全米アマチュア選手権」の予選会を突破した、というニュースがあった。長谷川さんは、学習の転移を上手く利用したのだろう。
今回は、学習の転移について書いてみたい。
目次
学習の転移とは
学習の転移というものがある。
学習の転移とは、時系列的に前段階に行った学習が、後段階の異なる学習に影響を及ぼす、というものだ。たとえば、野球の経験者が、未経験者に比べゴルフを容易に習得できる、という類のものだ。勉強であれば、数学が得意な人が、理科(物理や化学)も得意になる、ということがある。
正の転移と負の転移がある
学習の転移には、正の転移と負の転移がある。
正の転移の場合は、前の学習が後の学習にポジティブな影響を与える。逆に負の転移の場合は、前の学習が後の学習にネガティブな影響を与える。学習の転移がすべていいものかと言えば、そうではないようだ。
※なので、正の学習転移を狙う必要があるだろう。
類似性の高いものを選ぶ
学習の転移を狙うためには、類似性の高いものを選ぶといいようだ。
先に述べた、野球とゴルフ、数学と理科(物理や化学)、ピアノとそのほかの楽器、などという組み合わせだ。類似性が高いほど、正の転移の可能性やレベルが高くなるそうだ。
数学と理科(物理や化学)の関連性は、よく知られていることだ。国際数学オリンピックで金メダルを取った人が、国際物理オリンピックでもメダルを取る実力がある、というケースはめずらしいことではないだろう。
スポーツでも、野球やソフトボールの選手からプロゴルファーに転向し、成功したケースもめずらしくない。将棋のプロ棋士がチェスの強豪でもある、ということもある。
※学習の転移を上手く利用すれば、そうなるのだ。
類似性を見つけると結果が出る
両者の間に類似性を見つけると、それが結果につながる。
ある興味深い調査がある。数学と理科で、見かけは違うが本質的には同じ問題を作成し、生徒に解かす。そのとき、両者の類似性の気付きに応じ、生徒を3つのグループに分ける。順にA,B,Cとした場合、Aのグループの方が、数学の点数が有意に高かったそうだ。
※Aのグループは、最も気付き度が高いグループ。
そして、類似性に気付かなかったCのグループは、A,Bに比べ、数学と理科の点数が低い傾向にあったそうだ。この結果から、正の転移を狙う両者(両分野)の間に、共通点や類似性を見つけることができるかどうか、というところがポイントになることがわかる。
※共通点や類似性を見つけ、結びつける力が必要になる。
親が指摘する
子供だけで、類似性や共通点を見い出すのは、むずかしいだろう。
したがって、先生や親の役割が大事になってくる。本来であれば、先生が教科の壁を越えて類似性や共通点を指摘し、子供の気付きを促してくれればいいのだが、実際はむずかしいだろう。
そうであれば、親がその役割を担うしかない。普段から教科の壁を越えて、「これはあれと同じだ」、「これにはあれが使える」と指摘し、子供に気付きを促す。
そのためには、普段から(教科の枠を超えて)類似性や共通点を見い出すことが大事だと子供に語ること、自分自身もそのような意識を持ち、子供の勉強を見ることが大事になるだろう。
※もちろん、勉強に限ることではない。
得意教科を伸ばす+学習の転移が最強
前回の記事で、得意教科を伸ばすことについて書いた。
得意教科を伸ばせば、いいことがある。特恵効果と呼ばれる「得意を活かした方が、結果がよくなる」という効果を享受できるし、脳における「汎化」という「何かひとつの能力が伸びると、その能力とは直接関係のない能力も伸びる」という現象を利用することもできるのだ。
それに加え、学習の転移も利用すればいい。
得意教科を伸ばしながら、学習の転移も利用するのだ。そうすれば、かなりの成果に結びつくだろう。オール5のような成績をとる子供は、得意教科を伸ばしつつ、学習の転移も上手く利用しているのだ。
※得意教科を伸ばす+学習の転移を利用する、が最強だと思う。
学習の転移を利用すればいい - サマリー
まとめ
今回は、学習の転移について書いてみた。
学習の転移とは、先に行った学習が、後の異なる学習に影響を及ぼす、というものだ。
正と負があるが、当然、正の学習の転移を狙うべきだ。そのためには、(教科の垣根を超えて)類似性や共通点を見い出すことが大事だと子供に伝え、そのことを意識させること、親自身もそのような意識を持ち、子供の勉強を見る(コミュニケーションをとる)ことが必要になるだろう。
異なる教科における共通点や類似性を見つけることができれば、竹の地下茎のように結びつき、記憶も容易になり、理解も深まるだろう。ものごとの本質の理解にたどり着く可能性も高くなる。
そうなればしめたもので、結果はおのずとついてくるだろう。
今回の記事:「学習の転移を利用すればいい」