算数の成績を上げるために必要な力#2
「算数の成績を上げるために必要な力」の続きです。
前回の記事では、算数の成績を上げる力として、1)計算力、2)空間認識力、3)やってみる力、の3つが必要とした。もちろん、それだけでは不十分だ。今回は、その続きを書いてみたい。
目次
論理的思考をする力
算数には、論理的な思考力が必要になる。
論理的な思考とは、
「ある根拠となる事柄や考え方を関連付けながら,解決方法や結果の見通しをもち,筋道を立てて考えてい く力」
出典:思考過程をふり返り,「論理的思考力」を育てる算数指導
簡単に言えば、 合理的な根拠をもとに、「筋道を立てて考える力」のことだ。
以下、いくつか例を挙げる。
分類するとき
たとえば、MECEという言葉がある。
MECE(ミーシーもしくはミッシー、Mutually Exclusive and Collectively Exhaustiveの略)とは、「相互に排他的な項目」による「完全な全体集合」を意味する言葉である。 要するに「重複なく・漏れなく」という意味である。
出典:MECE - Wikipedia
ある分類に、「重複がなく、漏れがない」かどうかは、合理的な根拠をもとに、筋道を立てて考えないと、わからない。つまり、1)重複がないかどうか、2)漏れがないかどうか、を論理で確認できてはじめて、MECEと言えるのだ。※どちらか一方の条件を満たすだけではダメ。
人間という集合を例にとると、「年齢」による分類は、ある人が同時に20歳と21歳になることは不可能(重複なし)であり、全ての人がX歳という集団に属する(漏れなし)ため、MECEとなる。一方、「職業」による分類は、兼業を行う人間(重複)もいれば無職の人間(漏れ、ただし職業として「無職」という項目を設けるとすれば、漏れはなくなる)もいるためMECEとならない。
出典:MECE - Wikipedia
「職業」という分類は、学生や失職者など、無職の人もいるのでMECEではない。
※モレもダブリもある可能性がある。
演繹・帰納
演繹と帰納についても少し触れておく。
演繹も帰納も推論の方法であり、これらを使うためには、論理的な思考が必要になる。
演繹とは、前提から結論を得る推論だ。
算数では、次のような考え方です。
演繹的な考え方とは,
いつでもいえるということを説明するために、すでに分かっていることを基にして,その正しいことを説明しようとする考え方
出典:考え方の巻き-算数の考え方を身につけよう
具体的には、
オーストラリアの面積は,日本のおよそ20倍です。
アメリカ合衆国は,オーストラリアの1.2倍です。この2つのことが正しいとわかっているとします。
ならば,
アメリカ合衆国の面積は,日本のおよそ24倍だ。
と、はっきりと言いきることができます。
出典:考え方の巻き-算数の考え方を身につけよう
このような例になる。
※ただし、前提が正しくなければ、結論も正しくなくなる。
事象から因果関係を推論する
帰納とは、個々の事象から、因果関係を推論する、というものだ。
それは例えばこういうことです。
「Aくんの飼っていた亀が死んでしまった。
Bさんの飼っていたウサギが死んでしまった。
Cさんの家の花が枯れてしまった。」
…という個々の例から、
「『すべての生物は死ぬ』」
という全体に通じる理論を導き出すことです。
出典:演繹法と帰納法
実際には(現実の事象では)、単なる相関関係なのか因果関係なのか、見極めるのがむずかしいことがよくあるのだが、事象から「筋道を立てて考えていく」ということが大事なのだ。
意図を理解する力
問題の作成者には意図がある。
その意図を正しく理解できるかどうか…により、問題が解けるかどうかが決まる。
たとえば大人でも、(講演などで)人の話を聞くとき、「要領を得ずさっぱりわからん…」ということがある。これは、相手が何を話そうとしているのか、意図が理解できていないためだ。
相手の意図が理解できないと、相手の話についていくことが苦痛になる。
そんなときは、頭がボーッとしてくるはずだ(ほかのことを考えることもよくある)。算数の問題を解くことで考えれば、何をしていいのかわからず、頭を抱えている状態だ。
読み込む力も必要になる
出題者の意図を理解するためには、読み込む力も必要だ。
読む力というのは、集中力とリンクしている。集中力が高ければ、読む力も高くなる。
人によって型がいろいろあるんだけど、家で勉強する前に、まず「勉強のような遊びのような作業」をやるんだ。私も子どもの頃、家でなかなか勉強する気になれなくて困っていたんだよ。そこで考えたんだ。どうすれば自分をやる気にさせられるか。それが「漢字の練習」だった。漢字は勉強の一種だけど、字の練習のようなものでもあるね。毎日、家で勉強するときに、いきなり数学や英語などをやると、やる気が出ないから、いつまでもやらない状態が続いてしまうけども、簡単にできる「漢字の練習」を最初に15分ぐらいやると、自分の気分が「OFFのモードからON(勉強)のモード」へと変わるんだよ。面白いものだね。その後は、数学でも英語でもなんでもやったらいいよ。
出典:子どもの集中力は、こうやって作り出せる!
集中力を高めるためには、普段の行い(勉強の仕方)が大事だろう。
なかなか「OFF⇒ON」に切り替えることができない…という子供の場合は、「OFF⇒ON」に、スムーズに移行できる仕組みを作ることが大事だと思う。
「勉強のような遊びのような作業」を入れることで、ONへのハードルを低くしたり、タイマーをセットして動かすことで、半ば強制的に気分を切り替える、という手段もあると思う。
子供に合う方法を見つけるために、いろいろ工夫してみるといいだろう。
まとめ
今回は、「算数の成績を上げるために必要な力」について書いた。
今回の記事で書いたのは、1)論理的思考をする力、2)意図を理解する力・読み込む力、の2つだ。論理的思考では、MECE,演繹、帰納を取り上げた。
算数では、(問題を作りやすいので)演繹を多く使うのかもしれない。だが、帰納についても勉強しておきたい。事象から因果関係を求める、という技術は、仕事でも役に立つだろう。
前回の記事:「算数の成績を上げるために必要な力がある」
今回の記事:「算数の成績を上げるために必要な力#2」