志望校を下げた方がいいのか
高校受験などの際に、志望校を下げた方がいいのか、と思うことがある。
ぎりぎりで合格すると、入ってから苦労するのでは、落ちこぼれる確率が高くなるのでは。
いや、少しでも高いレベルに身を置くことがプラスになるだろう、学習環境がいい、まわりからいい刺激を受ける、好影響を受けるので、ぎりぎりでも入ったほうがいい…など、いろいろな意見がある。
今回は、志望校を下げた方がいいのか、というテーマで書いてみたい。
志望校を下げた方がいい?
ぎりぎり合格は
ぎりぎりの合格には、多分に危うい面がある。
<鶏口>ではなく、<牛後>になってしまうためだ。
難関校のビリより、中堅校のトップの方がいい、ということは、ごく普通にあることだ。高校であれば、後者が前者よりいい大学に進学する、ということは普通のことだ。会社の社員でも、大企業のビリより、中堅企業のトップの方が優秀だ。
実際に観測したことだが、下請け会社の社員のトップの方が優秀だ、ということがある。
超一流大学 vs. 普通の大学
超一流大学出身者と普通の大学出身者の業績を比較した調査がある。
※J.コンリーとA.S.オンデルによる、博士課程修了者を対象とした調査。
MITやハーバードを上位5%の成績で修了した学生の業績は、やはりすばらしい。大学のイメージどおりすばらしく、普通の大学のトップを上回る。だが、上位10~15%ぐらいであやしくなり、20%では逆転する。
※学校のイメージどおり優秀なのは、一流校の上位5%である。
つまり、普通の大学のトップ(上位1%)の方が、超一流大学の上位20%程度に位置する学生より優秀である、ということだ。普通の大学でも、上位10%に入っていれば、勝負できそうな感じだ。
※普通の学校でも上位1%というのは、(学校名で過小評価されるが)かなり優秀なのだ。
牛後には下押しが
難関校に入っても下位に沈むと、下押し圧力を受けることになる。
努力してもこれまでのような良い結果が出ないので、自分は本当は頭が悪いのではないか、まわりのレベルが上がれば、自分はこの程度にすぎない、この学校に無理して入ったのは間違いではないか、などと思い出す。
このように、自分で自分に下押し圧力をかける。
さらに、まわりの目が厳しくなる(そう感じる)、ということがある。
勉強しているのに成績が悪いやつ、頭の悪いやつ…という目で見られることがある。教師も期待しないし、そのことを肌で感じるようになる。見放されている…と感じると。モチベーションも上がらない。
このような下押し圧力がかかるので、そのまま下位に定着する…ということになる。
高校までは鶏口がいい
個人的には、高校までは鶏口がいい、と思っている。
簡単に入れる学校、ということではない。自分よりできる人もたくさんいて、ぎりぎりではなく、真ん中ぐらいで入れる学校、ということだ。そこから、上位10%、1%を狙っていけばいいのだ。
その学校に入ると、先に述べたような下押し圧力がないので、のびのびと学校生活を送ることができるだろう。ただし、勉強に十分なリソースを割き、上位10%、1%を狙う、ということが条件になる。
※そこで遊んでしまっては、鶏口にはなれないし意味がない。
牛後でもいい子供は…
中には、ぎりぎりの合格の方がいい、という子供もいるだろう。
背水の陣のような状況から実力を上げていく、というタイプの子供もいると思う。
このタイプの子供は、自信や自己肯定感があり、素直な子供だろうと思う。良い成績を自信や自己肯定の根拠にするタイプではなく、何があっても揺るぎない自信を持ち、自己肯定できる…というタイプの子供だ。
もし子供がそういうタイプであれば、ぎりぎりの合格でもいいと思う。
※むしろ、その方がいいのかもしれない。
大学では
大学を最終学歴とするのであれば、大学では<牛後>でいいのかもしれない。
日本の大学では、海外の大学のように、明確にランク付けされることがないためだ。
また、就職の際は、本人の実力よりも、大学名が高く評価される。一流の大学を出ていれば、一流の会社に入りやすくなる、ということだ。本当は、大学名より大学の成績を重視すべきだが、そう考える人事はまだ少ないだろう。
入社して(一流大学なのにこの程度か…)と、がっかりされることはあると思うが。
※一流校のイメージどおり優秀なのは、上位5%なのでそうなるのは必然なのだ。
志望校を下げた場合は
志望校を下げ、その下げた大学に入った場合だが、
そこでやることは、がっかりすることではなく、学歴コンプレックスを抱えることでもなく、そこで上位10%、1%を狙う、ということだ。そうすれば、かならず明るい未来につながるだろう。
わかる人にはわかるので、かならず評価する人があらわれるだろう。
志望校を下げるのは最後
最後に、実践的なことを書いておこう。
志望校を下げる判断をするのは、最後の最後にしよう。
そうしないと、モチベーションが下がるためだ。競争している最中に、モチベーションを下げてはいけない。50m先にあったゴールが突然10m先に変われば、当然、緩み全力で走ることをやめてしまうだろう。
もうひとつの理由は、努力の蓄積が閾値を超えるとぐっと伸びる、ということだ。
※この(異常な?)伸びを考慮する必要がある。
このことは、実際に経験してみないとわからない。だから、このままでいけば、当然不合格になるだろう、だから、志望校を下げよう…となる。この<異常な伸び>を経験したことのない人がそう思うのは当然でやむを得ない。
だから、親はそのことを理解して、子供に説明&アドバイスしよう。
志望校を下げた方がいいのか - サマリー
まとめ
今回は、志望校を下げた方がいいのか、というテーマで書いてみた。
あまりよくない理由では、見栄を張る、世間体を気にする、子供をどこの学校に進学させるかで、勝ち負けが決まる、偏差値を何より重視する、という親子の場合は、ぎりぎりの合格を狙うだろう。
いい理由では、その学校が子供によく合っている、その学校であれば、子供の目的を達成するために、必要な教育を受けることができる、少しでも高いレベルに身を置くことが子供のプラスになるだろう、と考え、ぎりぎりの合格を狙う。
ぎりぎりの合格を狙うかどうかは、現在の子供の状態次第になる。
自信や自己肯定感があり、素直である。何があっても揺るぎない自信を持ち、自己肯定できる…というタイプであれば、そうしたらいい。このタイプの子供は、仮に不合格になっても、大きなダメージを受けることなく、失敗を糧にすることができるだろう。
そうでなければ、わたしは志望校を下げて<鶏口>を目指した方がいいと思う。
実践的には、志望校を下げる判断をするのは、最後の最後にしたい。
今回の記事:「志望校を下げた方がいいのか」