天才児を育てる家庭環境とは#2
天才児はどんな家庭で育つのだろうか…と考えたことがないだろうか。
前回、天才児を育てる家庭環境とは、どのようなものか…ということを書いた。簡単にまとめると、1)第一子である、2)知的な刺激がある、3)子供が中心である、ということだ。
前回の記事:「天才児を育てる家庭環境とは」
今回は、その続きを書いてみたい。
※ハーバードで発達心理学の博士号を取得したE.ウィナー教授の見解にしたがう。
目次
親が意欲的である
才能のある子供の親は、意欲的である。
それは父親であることもあるし、母親であることもある。※母親の場合が多いようだ。
意欲的である、の内容だが…まず、「遊びは勉強のあと」という信念を持っているそうだ。そして、時間を無駄にしたり、いいかげんに勉強したり、責任逃れをすることを認めない。自らも勤勉に仕事に励み、余暇は余暇で積極的に楽しむ。※大工仕事、読書、スポーツなどを行う。
テレビの視聴に1日を費やす、という受動的なタイプの親はいないそうだ。
これは、前回紹介した、知り合いの親子の親にもあてはまることだ。
父親の方だが、勤勉に仕事に励み、 余暇は余暇で積極的に楽しむタイプの親だ。とても活動的な人で、間違っても、テレビの視聴に1日を費やす、というタイプの親ではない(笑)。
子供のために時間を費やす
才能のある子供の親は、子供のために時間を費やす。
また、費用だけではなく、終始イチローの練習につき合ったため、相当な時間も投資している(イチローのお父さんは、中小企業の経営者であったが、午後3時半以降は、イチローとの野球の練習に時間を充てた)。そのため、仕事にもマイナスの影響が出ている。
出典:人生の今を楽しむ方法
イチローのお父さんは、毎日イチローのために時間を費やしたそうだ。
親が社会的に成功しているが忙しい、というケースでは、親が子供に時間を費やすことができないことがある。そのような場合は、子供の学力という点で不利に働く可能性があるようだ。
親の学歴は平凡だが、子供の学歴がすごい…という場合は、親が子供の勉強に相当のエネルギーを費やしていることがよくあるそうだ。親が子に費やした時間は、無駄にはならないようだ。
※親の時間を子に使うことは、子への投資ということだろう。
言行一致が必要である
親は言行一致でなければいけない。
言行一致でない親というのは、子供に対して影響力を持つことができないのだ。
子供は親のことをよく見ている。これは、部下が上司のことをよく見ていることと同じだ(笑)。子供は親が言行一致でないと感じると、親に対する信頼度を低下させる。
その結果、親の子供に対する影響力が低下するのだ。
家庭による管理がある
才能のある子供の家庭は、子供を管理する。※親のかかわりのことだ。
管理の度合いは、分野により異なる。音楽やスポーツなどの実技分野の場合、家庭による管理が最も厳しくなる。一方、芸術分野では管理がほとんどなく、学問分野はその中間になる。
ピアニストを目指す子供の家庭では、親がほぼ例外なく音楽好きだそうだ。親が楽器を弾く場合もあるし、コンサートに足を運んだり、普段よく音楽をきく、ということもあるそうだ。
また、音楽レッスンをはじめることは親が決め、レッスンには親も深くコミットする。そして、子供がいいかげんにやることを許さず、努力することが大事だとよく口にするそうだ。
※子供がレッスンのスケジュールを自分で管理する、というのは、むずかしい。
学問分野の場合
学業分野の場合は、家庭による管理は穏やかになる。
親が子供に対し、「この道に進むように」と強要することはない。
どの家庭でも学習と知的な探求と業績をあげることが、すばらしく好ましいことであることを子供たちにはっきりと伝えていた。
出典:才能を開花させる子供たち p.224
強要や指図することはないが、その一方で、
親は子供に対し、「勉強することは価値のあることだ」、「学習と知的な探求と業績をあげることが、すばらしく好ましいことである」という明確なメッセージを送ることはするそうだ。
子供の自律性を尊重しつつ、何が好ましいかについては語る、ということだ。
また、子供に高い期待をかける、ということもあるようだ。
羽生善治さんの場合
将棋の羽生善治さんのケースはどうだろうか。
うちの両親はほとんど将棋のことを知りません。父親は基本的にアウトドア派だし、母親にいたってはルールも怪しい。私は誰からも強制されず、ただ楽しい気持ちが出発点としてあったので長続きしたのかもしれません。
出典:棋士 羽生善治さん(前編)
羽生さんは、誰からも強制されなかった、と述べている。
羽生さんの家庭は、芸術分野のそれに近かったのではないかと思う。
将来優れた芸術家になる子供を持つ家庭の親は、ほとんど管理はせず、子供に対しただ、1)自分のやりたいことに取り組むこと、2)精一杯それに取り組むこと、を求めるそうだ。
また、子供に対し、「自己実現が大事である」というメッセージを送るそうだ。
羽生さんの家庭も、このタイプの家庭だったのだろう。
親の管理が行き過ぎると…
親の管理が行き過ぎると、弊害が生じる。
親の管理が行き過ぎる場合の親として、「つくる親」が挙げられる。
ここでいう「つくる親」とは、子供の才能を作ったのは自分だ、とする親のことだ。このタイプの親は、子供の実績を我がものとし、自分自身が(世間から)注目や賞賛を浴びようとする。
この種の親は子供にすべてをかけるため、子は傑出した人物になる可能性がある。たとえば、アメリカの話だが、有名大学を10代の半ばで卒業し、20歳前に博士号をとる…という例もある。
反動が大きくなる
しかし、「つくる親」から受けた仕打ちの反動も大きいようだ。
※仕打ちというのは、度を越えた無理強いのこと。
神経衰弱やうつ病に悩まされたり、途中で落伍するケースもあるそうだ。15歳でハーバードを最優秀の成績で卒業した数学の天才が、その後数学の関心を失ってしまう…という例もある。
彼はその後、数学をすることに耐えられなくなり、平凡な事務職についたそうだ。
いくら教育熱心でも、「つくる親」になってはいけないのだ。
まとめ
今回は、天才児育てる家庭環境の続きを書いてみた。
天才児を育てる家庭は、親が意欲的で子供のために時間を費やす傾向がある。親の管理は、音楽やスポーツと学問分野では程度が異なる。前者は強く、後者は弱くなる。
学問分野の場合は、親の管理は穏やかだ。ただし、親が子に対し、「勉強することは価値のあることだ」、「知的な探求はすばらしいことだ」というメッセージを与える。さらに、「自己実現が大事である」ということも伝える。
このあたりは、普通の子供を抱える普通の家庭でも参考にできそうだ。
今回の記事:「天才児を育てる家庭環境とは#2」