井上尚弥のお父さんの教育がすごい#3
「井上尚弥のお父さんの教育がすごい#2」の続きです。
前回は、1)才能より努力だと考える、2)自分がやってみせる、3)子供のレベルを上げるためには…、ということを書いた。普通の人の子育てにも、真似できる点がありそうだ。
今回は、その続きを書いてみたい。
目次
無理に押し付けない
井上慎吾さんは、「無理に押し付けない」という教育方針をとっている。
ボクシングは厳しい競技なので、長く続けるためには禁止事項をもうけないほうがいいのではないか、と考えています。ハンドルにも遊びがあるように、四六時中ボクシングのために生きていたら息が詰まります。
出典:努力は天才に勝る! p.116
その理由として、ストレスを挙げている。
井上慎吾さんは、子供たちに「あれもダメ」、「これもダメ」としてしまうと、(子供たちが)ストレスに苛まれ、「もうボクシングは嫌だ」となってしまうのでは…と考えたそうだ。
些末なことは許容する
そして、「些末なことは禁止しない」という結論に達したそうだ。
大事なことは「日々の練習をおろそかにしないこと」であり、そこをキッチリやるのであれば、些末なことは(頭から)禁止しない、ということだ。たとえば、(アスリートの健康に好ましくないとされる)砂糖入りの炭酸飲料を飲むことを頭から禁止しない、ということだ。
※お父さんは、「飲みたければ、飲みなよ」と言うそうだ。
自律性を尊重する
この話から、何を学ぶことができるだろうか。
ひとつは、子供の自律性を尊重した方がいい、ということだ。
子供をあたかも自分の所有物だと思い(錯覚して)、子供を意のままにコントロールしようとする親がいる。そこまで行かなくても、それに近い考え方を無意識に持っている親もいる。
このタイプの親は、子供の自律性を尊重しない。
以前にも書いたことがあるが、子供の自律性を尊重するということは、子供の意見や子どもが自ら下した選択を尊重し、それに基づく行動を(親の介入により)妨げないということだ。
他者にコントロールされることに…
もし親が子供の自律性を尊重しなければ、他者にコントロールされる子供に育つことになる。
つまり、自分で考えて自分で動くことのできない、消極的な子供になる可能性が高くなるのだ。
さらに、そのことを自己認識すれば、コンプレックスになることがある。コンプレックスを抱えながら、他人によってコントロールされる人生…これは、親が子に望む人生だろうか。
親であれば子に対し、自律した人間になってほしい…と思うはずだ。
大事なことに集中する
もうひとつは、大事なことに集中する、ということだ。
言い換えれば、「些末なことにこだわらない」とすることもできる。
些末なことにこだわり、大事なことにリソースを使えない、ということがある。たとえば、ブログで言えば、デザインやレイアウトの細かい部分まで、こだわり抜く…ということだ。
もちろん、デザインやレイアウトは大事だ。読む人が見やすい・読みやすいものでないと、読んでもらえない可能性があるためだ。ただ、そのレベルを超えてこだわり抜く人がいる。
※こだわりが満たされないと、気が済まなくなってしまうのだ。
リソースを使いすぎてはいけない
結果、しょっちゅうデザインやレイアウトをいじる…ということになる。
ここまでくると、やりすぎだ。
ブログで一番大事なのは内容だ。なので、内容に最もリソースをかけるべきだ。大抵の物事は、リソースの配分により決まる。したがって、最も大事なことに、最もリソースをかけるべきなのだ。
※重要度の低いことに、こだわりすぎてはいけない。
できるまでやる
「できるまでやる」というのが、井上慎吾さんの教えだ。
小1からはじめ、カウンターを完璧に使いこなせるようになるまでに、およそ6年の歳月が流れています。1日に2~3時間の練習をしていたので5000時間ぐらいでしょうか。技術の習得には時間がかかるものです。近道はありません。
出典:努力は天才に勝る! p.135
ボクシングの高等技術であるカウンターの話だ。
井上尚弥は、相手のパンチをスウェーでかわして、カウンターを合わせる、という質の高い動きをすることができる。これは、攻防一体の高度で芸術的な動きだと言っていい。
※世界戦レベルでできる選手はそうはいない(努力の蓄積が必要)。
センスに見えるが実は努力の賜物
攻防一体でカウンターをキレイに打てるボクサーは、質の高い練習を長時間行っているのだ。見ている方は、天才とか天性のセンスで片付けてしまいがちだが、実際はそうではないのだ。
出典:井上尚弥の強さの秘密
この高度な動きを目にする方は、天才とか天性のセンスで片付けてしまいがちだが、実際はそうではない。課題を設定した練習を長時間行った結果、できるようになる動きなのだ。
具体的には、6年(5000時間)かかったということだ。
その途中であきらめていれば、当然この質の高い動きはできないままで終わる。「できるまでやる」という指導者(父親)の信念のもと、尚弥が地道に努力を積み重ねたからできるようになったのだ。一流になるためには、「できるまでやる」という考え方が必要だ。
子どもに説明し納得させる
だが、親が「できるまでやる」という信念を持っていても、子供がついてこなければ意味がない。
子供についてこさせるためには、説明して納得させることが必要になる。子供が十分な説明を受けて、「なるほど」と思い納得すれば、自ら「よし、やってみようか」となるのだ。
頭から「やれ」では子供は動かない。
前回の記事で、「やってみせて、言って聞かせて、やらせてみて、ほめてやらねば人は動かじ」という山本五十六の言葉を紹介したが、これは大人向けの言葉だ。結局、大人も同じなのだ(笑)。
好きなボクシングをもっと好きになってもらうためには練習の意味を伝え、納得させたうえでやらせなければなりません。
出典:努力は天才に勝る! p.153
筋トレ時も、どの箇所を鍛えているのかを把握しないでやっても、あまり意味がないそうだ。
鍛える部位を意識しながら鍛えた方が、そこの活動が大きくなり、筋トレ効果も大きいということがあるらしい。この話は示唆に富む。スポーツだけではなく勉強にも応用できるだろう。
まとめ
今回は、「井上尚弥のお父さんの教育がすごい#2」の続きを書いてみた。
今回述べたのは、1)無理に押し付けない、2)できるまでやる、3)説明し納得させる、ということだ。いずれも、スポーツ一家に限らず、普通の家庭でも実践できることだろう。
大成するスポーツ選手の場合は、親の考え方が優れており、子供のサポートを(正しく)しっかりとしている、という印象がある。いいところは、どんどん真似をすればいいと思う。
今回の記事:「井上尚弥のお父さんの教育がすごい#3」
参考文献:「努力は天才に勝る!」井上慎吾著